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 ★「対岸の彼女」★~書評つながり



著者: 角田 光代
タイトル: 対岸の彼女

『ヤマアラシのジレンマ』 というお話しを知っていますか?
  
  ある冬の寒い日に2匹のヤマアラシが、お互いに身体を
  寄せて暖め合っていた。ところが、寒いので近づこうと
  そばに寄れば寄るほど、お互いのトゲが刺さって痛い。
  でも、離れると今度は寒い。こうした事を繰り返す内に
  適当な距離を見つけていくという


対人関係の難しさを心理学的に分析する時にしばしば用いられる
寓話であるが、友情というのもこれに近いものがあるのではない
だろうか。

寂しいからそばに寄ろうとすると、自分のトゲで相手を
傷つけてしまい、同時に相手のトゲに傷つけられてしまう。
だからと言って、傷つくのが怖くて、距離を保とうとすると、
今度は、寂しくて仕方無い。

これは、人間であれば誰でも思い当たる事であると思うが、
女性の場合、男性以上に人との距離を保つのが下手な
生き物なのかもしれない。



【内容】

30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。
性格も生活環境も全く違う二人が、仕事を通じて知り合う。
内向的で人づきあいの苦手な小夜子に取って、家庭に縛られず、自由に行動できる葵は、ある意味羨望の的であったが、
実は、葵自身も学生時代人間関係で傷ついたというトラウマを持っていた。



女性というのは、どうして、生の人間同士で向き合う事が下手なんだろう。
既婚、未婚。専業主婦、働く女性。子の有る無し。
夫の職業、年収。子供の成績、進学先。

女性が女性と知り合い、つきあう時、まず目につくのは、相手の本来の
姿ではなく、彼女のまわりをとりまく『属性』
○○ちゃんのお母さん。○○さんの奥さん。
ひどい時には、相手がどういう名前であったかも知らずにつきあう
場合もある。

こういった『属性』の一つ一つが、ハリネズミのトゲ
自分のまわりを、無数のトゲでガードし、相手に近づいていっては、
傷つけ、そして、相手のトゲで、傷つき・・。

学生時代は良かった。

『属性』って言ったって、せいぜい、容姿か成績か家族構成か位。
それにしたって、自分たちの夢に較べれば、たいして重要なものでは
なかったから。
それが、成人するとどうだろう。
相手そのものよりも相手の属性にばかり目が行って、優越感を感じたり、引け目を感じたり。

こんなつきあい方をしている限り、女性の友情など育つわけがない。

でも、この小説の主人公二人は、お互いのトゲで傷つけあった時期も
あったが、見事にそれを乗り越え、お互いの生身の姿に触れる事が
できた。


   「対岸の彼女」

小夜子にとっては、葵は、自分とは全く住む世界の違う
対岸の人間であり、歩み寄れない存在であった。
でも、葵にとっても小夜子は、自分が掴めなかった生活を
手に入れている全く世界の違う人間であった。

そんな、全く相いれない『対岸の人間』であったはずの二人が、
見かけの属性を取り払い、個々の人間として向かいあった時、
実は相手は、自分にとって、対岸どころが自分に最も近い人間
あることを知る。
そして、その時に、二人は友情の第一歩を踏み出すことができた
のである。

こういうテーマを題材にした小説は、昔からたくさん書かれているが、
その小説にどれだけ引き込まれるかは、描かれている人物にどれだけ
リアリティーがあって、どれだけ、身近な人物に感じられるかどうかに
かかっていると思う。
角田さんの描き方は、さすが。
一つ一つの例が、自分の身の回りの世界であるかのような錯覚が起きる。

角田さん自身も書かれているように、

 「全身で信じられる女友達が必要なのは、
        大人になってからなのである。」


専業主婦で、社会から取り残されているようなあせりを感じている人
仕事や収入面では充実しているが、ふとした時に、一人でいることの
寂しさを感じる未婚の人
どんな立場の人であっても、共感を得られる一作である。
是非、読んでみて欲しい。

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えそらん

Author:えそらん
神出鬼没の回遊魚。
高校で国語を教えています。
はっきり言って、日本一古典の似合わない先生だと思います。

* ただいまハマリ中~*
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・・・で、最近は松潤

と気が多いです。

* シフクTIME * 
  ライブ行くこと
  映画・海外ドラマ(米)鑑賞

* 老後の夢 *
・ロズウェルの円盤墜落現場訪問
・CIAに再就職(雇って~♪)
・アタック25の出演

『日々是好日』をモットーにフットワークのいい毎日をめざしています。

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